桜空あかねの裏事情
そこまで聞いて、普段から傍若無人な彼とは言えど、その行動原理は間違いなくオルディネにあるとアーネストは確信する。
「ギネヴィアの異能は瞬間移動だったな。稀有な能力ではないにしろ、経験があるからか諜報ではそれなりの手練れで大いに役立つ。仮にもしもの事があったとしても、替えもいくらでもいる非常に都合の良い人材でもあるがな」
「物騒な物言いだね。まるで彼女が捨て駒みたいだ」
「そんな事はない」
否定し口元に笑みを浮かべるジョエルだが、サングラスの奥にある瞳は笑っていなかった。
ギネヴィアはジョエルから諜報の任務を主に任されている。
それは危険を伴うものであり、使い勝手の良い方がいいというのも一理ある。
しかしその役割を与えられてる者が、このチームにはもう一人存在する。
その者も彼にとっては捨て駒なのだろうか。
「…言っておくが、結祈はまた別の話だ」
釘を刺すように気に掛けていた人物の名前を出され、アーネストは僅かに反応する。
「勿論、私からすれば優れた能力を使いこなせず、役立たずで嘆くところは多い」
「………」
「しかし私の役に立たずとも、彼女の役に立てばいい話だ」
「彼女?」
「今度オルディネにやって来るお嬢さんのな」
――お嬢さん……。
その言葉を聞いて、先刻の会話と拝見した写真を思い出す。
短い黒髪に、やや幼い顔立ちの少女。
彼が標的にしている時点で何かあるのだろうが、自分の中では少なくともどこにでもいるよう平凡な娘に見えた。
「そう言えば会いに行ったんだったね」
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