桜空あかねの裏事情

普段から誰と構わず皮肉を浴びせ、相手に不快感を与えるジョエルだが、他者との会話から必ずと言っていいほど、自分の欲しい情報を引き出す事に成功している。
言いたい事だけ言って、他人の意見を聞こうとしない印象を与えつつも、実は聞く耳を持ち、話をうまく引き出す。
そうでなければ、あんな大量の情報と知識を持てるはずがないのだ。
簡潔に言えば、状況を見切って臨機応変に対応することと、駆け引きが異様なほどに優れているということだ。


「だからジョエルに知られてたとしても、驚く事じゃないんだよねー。気に食わない事に変わりはないんだけどさー」

「でしょうね」


そうでなければ、あの男に対してあんな悪態をつくわけがない。


「ま、そんな事はどうでもいーや。で、ジョエルはいつ帰って来いって?」

「今すぐよ」

「えーそれは困るなー。兄さんが帰ってくるのは、連休終わりなんだ。それまではここにいたいんだけど」

「そう言われてもねぇ…」


ジョエルに直接言われた任務は、なるべく時間を掛けずに迅速に遂行すると決めている。
というのも後が怖いからだ。
だがいつまでも、彼の言いなりなのも些か癪だ。
多少の事ならこちらで適当に言っておくのもありかも知れないと、ギネヴィアの頭に過ぎる。


「……仕方ないわね」


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