桜空あかねの裏事情

黎明館 三階 あかね自室



あかねが目を覚ました頃には、辺りは薄暗くなっていた。
部屋の明かりを付けようと体を起こすと、肩から何かがずれ落ちるのを感じた。
気になって見ればそれは毛布で、ここには誰もいないがジョエルが掛けたのだと不思議とそう思えて、少しだけ微笑む。
相手を見下し騙し、冷淡で皮肉しか言わないジョエルを、ここに来た当初は好きではなかった。
それどころか不信感を抱いていたほどだ。
だが今はそれだけではなく相手を気遣ったり、何だかんだ言いつつ世話を焼いてくれたり、実力不足な自分をさり気なく助けてくれたりと、ジョエルの優しさをあかねは知っている。

――器用に見えて、意外と不器用なのかも。


そんな事を思いながら明かりをつけて、顔を見るために机に投げ出されているように置かれている手鏡を手に取る。
するとあかねは、自分の顔を見て苦笑するほかなかった。


「やっぱり腫れてるよねぇ」


ジョエルの好意に甘えて、あれだけ泣いたのだ。
予想はしていたものの、見事な瞼の腫れ具合に苦笑し続けるしかなく、あかねはソファに深く腰掛ける。


「これじゃあ、今日は昶達に会えないや………お腹空いた」


そう呟いた矢先、不意にドアが開いた。
ジョエルだろうかと思いながら振り返ると、あかねは次第に腫れた目を瞬かせた。


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