桜空あかねの裏事情
「ねぇあかねちゃん」
一通り話し終わったのか、泰牙は声を掛ける。
「君はこんな俺と仲良くしてくれて、本当に感謝してるよ」
「そんな……私も泰牙さんとお話するの楽しいですから」
そう笑顔で答えれば、泰牙はどこか困ったように、頭を軽く掻いた。
「うーん……いつ話そうか迷ってたんだけどさ。俺、そろそろここ出て行こうかと思って」
「……え」
あかねは唖然とする。
「まだ治ってないけど、もう歩けるし丁度いいかなぁって思ってさ」
「そんな……私、迷惑だなんて思ってないですよ」
「それは分かってるよ。でもねぇ……」
曖昧に答える泰牙に、ますます不安になる。
「もしかして……誰かに出てけとか言われたりしたんですか?」
「言われてないよ。ただ雰囲気的にね。やっぱり得体の知れない人間を匿うのに抵抗はあるでしょ。特にサングラスの人とかは、俺の事歓迎してないのは最初から明白だったし」
その言葉に、目の前のこの人は他者の感情に敏感で、繊細なんだと思い知らされる。
言葉で伝えなくても、他者から現れる態度や仕草で、感情を察してしまうのだと。
「……ジョエルの事なんて、気にしないでいいです。あの人はちょっとでも気に入らない事があると、駄々をこねる子供みたいな人ですから」
「んー……そうは言ってもねぇ。彼がこのオルディネの責任者みたいなもんでしょ」
「う、それは……半分はそうですけど」
歯切れの悪い言葉しか返せないが、引き留めようと途切れ掛ける言葉を慌てて紡ぐ。
「で、でも!出て行くなら、怪我が治ってからでも良いじゃないですか!私はもっと泰牙さんとお話したいです!!」
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