桜空あかねの裏事情
「あ、そう言えばあかねは?後で話すとか言ってたけど、違う部屋にいんのか?」
話題に出て、思い出したのだろう。
何より気絶する直前まで一緒にいた友人を、気にかけないはずもない。
そう思うと同時に、今は自分の感傷に浸っている場合ではないのだという現実を突きつけられる。
「まだお話していませんでしたね。実は――」
結祈は今まで起こった出来事を隠す事なく全て伝えた。
昶達が襲撃されていた時と同時に、黎明館も襲撃されていた事。
彼等の正体と目的。
それにより、あかねが攫われてしまった事。
結果としてオルディネが深刻な事態である事を。
「そんな……じゃあ、あかねは…」
「はい。申し上げた通り、ここにはいません」
「……オレがもっとちゃんとしてれば」
昶は悔しげに俯いて、拳を握り締める。
「あかねと逃げて大通りに出たら、待ち伏せされてたんだ。ヤバいって思ったんだけど、オレの言霊でなんとかなって」
朔姫の話では、最初に対峙した時に相手の異能の性質上、長居させる事を危惧して二人を逃がしたと言っていた。
だがそれは相手も予想していたのか、はたまた念には念を入れてか、結果として敵の策略に嵌ってしまったのだろう。
「それで気が抜けちまって……まさか後ろにもいるとは思わなくて」
それでも昶は、以前より使いこなせるようになった異能で、敵を退ける事が出来た。
だが彼の言う通り、それに安堵して背後にまで気が回らなかったのだろう。
朔姫なら周囲に気を配る事が出来たかも知れない。
だが彼もあかね同様、戦闘経験などはない。
「あかねは異能をまだ上手く使えねーから、守ってやらないといけなかったのに。肝心な時に守れないなんて……ダチ失格だ」
「何故です?あかね様は昶に守って欲しいなどと言ったのですか?」
「いや……でもあかねはオレが不安な時、いつも守ってくれる」
昶は更に言葉を続ける。
「それだけじゃない。支えてもくれるし、導いてもくれる。だからオレも、守りたいし支えたいんだ。あかねがそうしてくれたように」
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