桜空あかねの裏事情

「……」


その言葉に沈黙を貫き、悲しそうな顔をするあかねの頭を、泰牙はまた優しく撫でる。


「だけどあの日。連中に見つかって油断して、死にかけて助けられて。そして君達に会った。初めてだったよ。怪我人に向かって早く出てけとか。大して話題もないのに、毎日やってきて強引に約束を取り付けられたりしたのは」

「……嫌でしたか?」


あかねが控えめに尋ねれば、泰牙は一息吐いて優しく笑った。


「最初はね。君があまりにも健気で眩しくて、自分の情けなさや愚かさを、突きつけられた気がしたんだ」


長い間他人と関わる事がなかった泰牙は、オルディネに保護された時、表には出さなかったが内心戸惑っていた。
それはジョエルや陸人を始めとする、オルディネの面々の個性が強かったというのもあるだろう。
その中でもあかねは、泰牙が来てからというもの毎日甲斐甲斐しく足を運んでいた。
しかし素性や事情を問い詰めるどころか、自分やオルディネの面々について話すだけ。
泰牙からしてみれば異質だった。


「でも君は変わらず俺のところに来て、色んな事を話してくれた。次第にその時間が楽しくなってきたんだ。まさか裏にあんな事があるとは、思いもしなかったけどね」

「裏…?」

「聞いたよ。あかねちゃん、オルディネのリーデル候補なんだって?」

「!」


あかねが目を見開き、体が僅かに跳ねる。
それを見た泰牙は、大げさに肩を落とし落胆の色を見せた。


「結構ショックだったなぁ。俺のところにいつも来るのは、そういうことだったんだって」

「違います!……とは言い切れないですけど!泰牙さんと仲良くしたかったのは、それだけじゃないっていうか……私自身思ってたことで!その……騙すつもりは、なかったんです。ごめんなさい」


今までひた隠しにしていた事実を告げられ、あかねは慌てて弁解しようとするが思うように言葉が見つからず、最終的には謝罪の述べる。
しかし泰牙は拗ねた表情を浮かべまま言葉を続ける。


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