桜空あかねの裏事情

「昶でいいよ。俺さ、よく人に気を遣っちまうんだけど、あかねとは気軽に話せる気がするんだ!」

――それは遠慮しないと言う事?

昶の言葉に些かの疑問と、知り合って間もないというのに積極的に馴染もうとする姿に、戸惑いが浮かぶものの、あかねは敢えて何も言わずに笑う。


「それはどうも」

「あ、本気にしてないな?」

「だって初対面で言われても」


――いまいち実感がない。

実直な感想だった。


「はっきり言うな。でもまぁ……確かにそうか。はははっ!」


愉快に笑いながら歩く昶につられて、あかねも笑う。
確かに知り合ってから間もないが、話しやすいのは確かで、それが彼の特有の性質、つまり長所なのだろう。

――とりあえず悪いヤツではないらしい。
そう思いながらあかねは、昶と他愛のない話をして下駄箱まで歩いた。



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