妖怪涼祭
出会い
金魚すくいや水風船。
わたがしやたこやき。
色とりどりな浴衣が行きかうお祭り。
あるカップルがいた。
そして、その男が言った。
「俺、食いモン買ってくるから待ってて?」
「うん。ありがとう。」

一緒にいた彼女はその男の後ろを見つめたあと
辺りを見渡した。
はた、と目に止まったのはお面屋さん。

彼女は 一つのお面に惹かれた。
キツネのお面。
様々なキャラクターのお面の中に一つ
キツネの形のお面。
その お面に惹かれて手を伸ばす。
「これ下さい!」
彼女の下から声がする。

小さな男の子。
小学生くらいの小柄な子。
「あ、お姉さんもソレ欲しかった?」
その子は彼女を見て
申し訳なさそうにする。
彼女は その子に
狐のお面を譲ってあげた。
その子は白い浴衣を着て
狐のお面をつけた。

「お姉さんありがとう!またお礼しにいくから。」


そう言って
その子は 森の中へ
消えていった。

彼女は その後 ずっと森を見つめていた。
暗いあの森の中にあの子の家はあるというのか?
彼女は軽く首をかしげた。
「おいっ、狹姫(さき)!」
「あ、朶茅(たかや)。ありがとう。」


朶茅は彼女の幼なじみで現在は彼氏だ。
たこやきとやきそばを手に持って
朶茅は狹姫を見つめた。
「勝手に離れんなって・・・・。」
「ごめんごめん。ちょっと・・・・」
狹姫は朶茅から離れた事を謝り
そして さっき会った子の事を考えた。
狹姫は また会える気がしていた。
何でなのか。
それは分からないというのに。
「どした?」
朶茅が狹姫の顔を覗きこむ。
「んーん、別に。」

狹姫は笑顔で朶茅にそう言って少し森を見つめてから
朶茅に続いてベンチに座りタコ焼きを食べた。

その瞬間

チリーン


鈴の音がした。


チリーン



か細いような
でも凛としていて
堂々としている音。



「・・・?」
狹姫は首をかしげる。
こんなに ざわざわと
賑やかなのに 鈴の音がハッキリ聞こえる。

「どした?狹姫」

朶茅は狹姫を心配した顔で見つめる。
狹姫は朶茅に心配をかけたくなかった。
「んーん、なんでもない。」
狹姫は無理に笑顔を作る。
でも 朶茅にはいつもバレる。
「お前はそう言っていつも我慢するだろ。」

「大丈夫だって。」

「本当か?何かあったら言えよ?」

狹姫は朶茅に心配をかけたくなかった。
頼る事は迷惑だと思って。


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