わたしの魔法使い
突然「お酒飲める?」なんて聞かれるから、僕はてっきり家で飲むのかと思ってた。

でも、手を引かれてやってきたのは、


「家じゃない?」


近所の居酒屋だった。

まだ早い時間のせいか、僕たち以外の客がいない。




「おじさん。とりあえずビール。それと、何か適当にちょうだい。」

「あいよ!!今日は一人じゃないんだね。彼氏?」

「ふふっ。ナイショ。」



朱里ちゃんが居酒屋の常連だなんて、かなりの驚きだ。

それも、結構渋めの居酒屋。

朱里ちゃんの雰囲気からは考え付かない。



「常連なの?」

「常連…かな?ここ、お昼は定食やってるし…ほら、私、料理ができないでしょ?結構、ここで夕飯食べたりしてたんだ。」



ビールが運ばれてくるまでの間、この居酒屋の話が続く。

ここの定食がおいしいこと、特にハンバーグが絶品なこと(気を使ってか、僕の方がおいしいとは言ってくれたけど)、常連客の事。



「あいよ!ビール、お待たせ!!」


ビールが届き、とりあえず僕たちは乾杯をした。

何に乾杯かって?

…何だろう?とりあえず「お疲れ様」かな?


< 106 / 303 >

この作品をシェア

pagetop