わたしの魔法使い
急いで部屋の鍵を開けると、そのまま縺れるように玄関に倒れ込んでしまった。

「――!」

「――!大丈夫?!」

体が冷たくて、歩くのがやっとなのに、颯太さんは私を庇うように下敷きになってくれていた。

「…僕は大丈夫……」

苦しそうな呼吸をしながら、それでも懸命に優しい笑顔を向けてくれる。

この人は本当に優しいんだね。自分は辛いのに。私を守って、笑顔まで見せて…。

華奢に見えるのに、意外としっかりとした腕。

茶色の瞳を持った中性的な顔。


――女装させたら綺麗だろうな…


……なんて考えてる場合じゃない!!

「ととととにかく立って!!今タオル取ってきますから!」


ちょっとドキドキしちゃった…。

綺麗な顔していて、優しくて、華奢に見えるのに…意外に男らしくて…



でもね。

ドキドキした気持ちはナイショ。




って!!

ドキドキしてる場合じゃないし!!!

濡れてるんだよ!

風邪ひきそうなんだよ!!



それに私、結構重いんだよー!!!!


あわてて立ち上がると、足元には心配そうなゴン太の顔。

レインコート着ていても、ゴン太もびしょ濡れ。

ゴン太もお風呂に入れなきゃ…。

でも、まずはタオル!


ゴン太と二人で住むには少し広い、10畳のワンルーム。

その部屋の一番奥のクローゼットに…

――あった!!

バスタオル!!!しかも新品!

私はそのバスタオルをつかむと、玄関へ戻った。


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