わたしの魔法使い
隣町の住所までは、自転車30分くらいだった。

坂の多い町なのに、その住所までは、不思議と平坦な道が続いていた。




「…――しかし……わかんない……」


紙に書いてある住所と、番地を交互に見るけど、なかなかたどり着けない。

住宅街だからか、どこを見ても同じように見えちゃって、さっきから同じところをグルグルしてる。


「迷子かも……」


この年で迷子って、かなりイタイよね…

私ってこんなに方向音痴だったかな?

わーん。もう泣きそう……



そんな私の肩を、誰かが叩いた。


「…――どうしました?」


振り返ると、上品そうなおばさんがニコニコと笑って立っていた。


「どうかしたの?」

「あ、えっと……ここに行きたくて……」


手に持った紙をおばさんに見せると、おばさんは優しい笑顔で頷いた。


「ここに行きたいの?じゃあ、一緒に行きましょう」


「ば、場所さえわかれば……」

「私もここへ行くところなの。だからね。」


そういうと、おばさんは先に歩き出した。


場所さえわかればよかったのに……

でも、おばさんもここに行くっていってたよね?

ここって、アパートの住所じゃないの?

ここに……何があるの?



< 247 / 303 >

この作品をシェア

pagetop