わたしの魔法使い
一緒にいた時間より、離れていた時間の方が永い。

それでも忘れることができなかった。

その颯太の腕の中に、私はいる。

それが嬉しくて、とても幸せで、ずっと続いてほしいと願う。


「…――颯太……もう……どこにも行かない?」

「ん…」

「約束してくれる?」

「約束するよ」


そう言うと、抱き締めていた腕を緩めて、優しいキスをひとつ、落としてくれた。

宝物に触れるように、そっと唇に落ちたキスが、離れていた時間を少しだけ、埋めてくれたような気がした。



このままずっと、抱き締めていてほしい。

……と思ったのに……



ぐ~~~~~~~




また……お腹が鳴っちゃった………


あーあ。私ってどうしてこうなんだろう?

颯太といい感じになるとお腹が鳴るの。

…今朝、ご飯食べてなかったっけ。


「ぷっ!相変わらずだね。お腹、空いてる?」

「…空いてる……」

「お昼も近いし、なにか作ろっか!」


私に回していた腕をほどくと、颯太は私の手を引いて店の奥へ連れていってくれた。



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