わたしの魔法使い
初めて朱里に作ったのもカルボナーラだったな。

冷蔵庫開けたら空っぽで、これが女の子の冷蔵庫ですか?って感じだった。

あれには本当に驚いたっけ。

でも、すごく美味しそうに食べてくれて……



今も隣で美味しそうに食べてくれてる。

やっぱり誰かのために作るのって、いいな。



「色々食べさせてもらったよね。カルボナーラもそうだけど、しょうが焼きとか、ワケわかんないものとか」

「あー!一発料理ね!自分でも作り方がわかんなくなっちゃってさー」


次々出てくるあの頃の思い出は、あの頃の色を伴って鮮やかによみがえる。

まあ、朱里から出てくるのは食事に関することが多いけど……


パクパクとよく食べる口はあの頃と同じで、今も次々にパスタが吸い込まれていく。

そういえば、初めてキスしたのって、水族館だったな。

その前に“キスしていいか?”って聞いたらひっぱたかれたこともあったっけ。

あのときの朱里、顔真っ赤にさせて、金魚みたいに口をパクパクさせて、可愛かった。


そんなことを思い出していたら、田中室長と付き合ってたことも思い出した。

……キス…したのかな?

室長とも……

それって、ちょっと嫌かも……



「…――ごちそうさま!」

「お粗末様でした。相変わらず美味しそうに食べたねー」

相変わらずの完食。



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