わたしの魔法使い
何気ない顔して食器をキッチンに運んだけど、どうしても浮かんでくるのは、室長の顔。

“付き合ってる”といったときの幸せそうな顔が浮かんでは消え……の繰り返し。

嫌だな。僕ってば嫉妬してる?

付き合ってればキスくらいするだろうし、その先だって……あるだろうし。

想像したくないけど。

やっぱり気になる!


「…――ねえ、朱里。ひとつ……聞いてもいい?」


聞いたってどうしようもないってわかってる。

だけど、すごく気になる。
気になりすぎて、スポンジに洗剤、つけすぎた!

マ、マズイ!



「田中……室長と付き合ってたんでしょ?」

「うん……」

「どれくらい…付き合ってたの?」

「…1年……くらいかな?」

「そう…………」


声が強ばってるのがわかる。

聞いたってしょうがないのに……

1年も付き合ってれば、色々あるだろうし。

それに、嫉妬する資格なんて僕にはない。

それでも聞かずにいられなかった。


「…キス、したの……?」


後ろで朱里が困っているのがわかる。



食器の泡が水で流れるように、僕の嫉妬も流れてくれればいいのに。

こんな風に、朱里を困らせるなら……



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