わたしの魔法使い
田中ってやつが置いてった紙持って出ていったきり、ねえちゃんが帰ってこない!

自転車の鍵持ってたから、そう遠くは行ってないはずだけど……

昼飯も帰ってこなかったし、もう部屋の中暗くなってきたから、夕方か?

いつもなら行き先も言っていくのに……


心配だ………

ねえちゃん、ああ見えて抜けてるところがあるから、どっかで自転車でこけてたりしないかな?

やっぱりねえちゃんには、俺がついてないとダメなんじゃないかな?



もうじっとなんてしてらんねぇ!

部屋ん中ウロウロするぞ!


……何て思ってたら


「ただいまー」


帰ってきた!


………ん?

誰か一緒?


「…――ゴン太!」



この声は?

もしかして……





颯太だ!

颯太の声だ!

何で?

何でねえちゃんと一緒なんだ?



「ゴン太。田中さんの置いてった紙、颯太の住所だったの!」


そういうことか……


「ゴン太!久しぶりだなー!元気だったか?」


よ、よせよ!

ぐちゃぐちゃなで回すの!

気持ちいいじゃんか……


でも……そうか……

颯太、戻ってきたのか……

これでもう、ねえちゃんの暗い顔見なくて済むんだな?

俺は颯太に飛び付いた。

こいつには負けないって思ってたけど、ねえちゃんにはお前が必要なんだよ。



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