わたしの魔法使い
顔が赤くなるのがわかる。

まっすぐに颯太さんの顔が見れない。

こんな時どうしたらいいの!

今までこんな風に言われたことない。

こんなこと、お話のなかでの事だと思ってた。



長い沈黙が続く。

息が苦しくなるくらい、長い沈黙。

目に入るのは、白い颯太さんの手と、今食べたばかりの空のお皿。

聞こえるのは、気持ち良さそうに眠るゴン太の寝息だけ。

苦しい……

苦しいよ……



「出ていけ…とは、言いません…」

私はやっとの事で口を開いた。


「ホント?!よかったー!僕ね、家事全般得意なんだ!犬も大好きだし!家の事は任せてね!」



……ん?


さっきの真剣な声はどこへいった?

ゆっくりと顔を上げてみると、そこには満面の笑みを浮かべ、嬉しそうな颯太さんの顔。

「あのー、出ていけとは言わないけど、何で一緒に住む話になってるの?」

「そりゃあ、そばで守るって言ったら、一緒に住むことになるでしょ?それに、朱里さん。家事か苦手っぽいし?」

「う…家事は苦手だけど……うち、ベッドは一つしかないし、部屋もワンルームだし…それに!変なことになったら困るでしょ?」

「変なこと?」



そう。変なこと。

男女がひとつ屋根の下で暮らすって、そういうことも起きがちじゃない?


頭の中はめくるめく妄想で一杯。




暗い部屋。

裸で抱き合う私と颯太さん。

イヤー!恥ずかしい!





「……あの。何を妄想してるかは大体察しがつきます。でもね。僕、そういうの興味ないから。」

「興味がない?」

「そう。興味がないの。女の人は好きだよ。キスしたいと思うこともある。だけど、そういうことに体が反応しないの。試してみる?」



サラッととんでもない告白された?

体か反応しないって?


どういう事?

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