マスカケ線に願いを


「杏奈」

 食事が終わって、食器を洗っていると、ユズが私を抱きしめた。

「もう、洗い終わってからにしてよ」
「一緒にお風呂入ろう?」

 耳元で、甘えたような声を出すユズに、ぞくりとする。

「さ、先に入ってきたら?」
「杏奈と一緒がいい」

 どうもユズの強引モードが発動しているらしい。私が何を言っても、梃子でも動きそうにない。

「ユズ、まだ洗い物終わってないから……」
「終わったら、一緒に入る?」

 この男……

「わ、わかったから。今は離れて」

 私の言葉に、やっと離れてくれたユズはくすくす笑って、

「杏奈、顔真っ赤で可愛い」

 と、抜かしてくれる。
 顔が赤くなってることくらい自覚していた。でも、それはユズのせいだ。

「夜、楽しみだな」

 ぼそっと耳元でささやいて去っていくユズに、限界まで赤くなった私の顔は、爆発しそうになってしまった。

「ううう……ユズの馬鹿」

 小声で文句を言いながらも、夜を期待してしまっている自分に腹が立った。


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