マスカケ線に願いを

「からかってるだろ」
「ううん、ユズのこと大好きだなって」

 案の定、片手で頭をかくユズは、相当照れているようだった。

「でも、俺もこれから打ち合わせで忙しくなるかもしれないからさ、ちょうどいい機会かもしれない」
「今度の案件は、そんなに大変なの?」
「んー、まあな」

 それなら本当にいい機会だ。私は微笑んだ。

「何もかも落ち着いて、私の心の整理がついたら……一緒に暮らすの考える」
「ああ、いい返事待ってる」
「うん」

 車が私のマンションの前に止まると、私達はキスを交わした。

 何度も、何度も、触れては離れてを繰り返して。
 名残惜しくてたまらぬように。

「……それじゃあ、また明日」
「またね」

 最後まで手を握りながら、別れ際に再びキスをする。

「おやすみ」
「ああ、おやすみ」

 これから起こる波乱を知らなかった私達。私達の甘い日々は、このときを最後に、終わってしまった。


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