マスカケ線に願いを

「綺麗なところね」
「さ、入ろう。皆待ってるよ」

 美鈴に促されて私達は店に入った。美鈴がウェイターと何か話をして、そのウェイターが私達をテーブルに案内した。
 そのテーブルにはすでに数人の男女が座っていた。

「皆久しぶり!」
「美鈴? 貴子? 杏奈も久しぶり!」
「茜! 京子も!」

 まずは、やはり女同士の歓声が盛り上がる。私も久しぶりに会った友達に、テンションが上がった。

「ほら、尚樹、大河原さん来てるぞ」
「うるさいな」

 そんなからかうような声が聞こえて、私はそちらに視線を向けた。男も五人ほど同じテーブルについていて、傍から見たら合コンのような雰囲気だ。

「大河原さん、久しぶり! 相変わらず美人だなぁ」

 愛嬌のある笑顔でそう言った眼鏡をかけている彼は、おそらく田辺君。その隣に高島君が座っていた。私の記憶に間違いがなければ、他には川田君、狭山君、浜木君だ。

「本当、杏奈ってば相変わらず美人よね! 当時、杏奈のこと狙ってなかった男なんていた?」
「全員狙ってたでしょ」

 女の子達のからかうような言葉に、その場に集まっていた男性陣が苦笑した。私は美鈴と貴子と一緒に席に着いた。

「本人の前で言うかよ」
「はは、杏奈、彼氏は?」
「うん、いるよ」
「なんだいるのかよ」

 男性陣からブーイングが来て、私は戸惑う。高校時代、そんなに男子と関わりがあったわけじゃないからだ。

「写真ある? 見せて」

 美鈴の言葉に、私が携帯を取り出すと、皆がそれを覗き込んできた。
< 199 / 261 >

この作品をシェア

pagetop