マスカケ線に願いを

「えっと、この人だけど」
「うっわ、なにこのイケメン」
「あー、男組みんな負けたね」

 女性陣の容赦ない言葉に、私は笑ってしまう。

「皆は今、何してるの?」

 私の質問に、それぞれが答えた。
 美鈴は看護師、貴子と京子はOL、茜は保育士、田辺君は銀行員、高島君と川田君と狭山君はサラリーマンで、浜木君はインストラクターとのことだった。

「へえ、皆いろいろだね。私は司法書士してるの。ちなみに彼は弁護士なんだ」
「やっぱ、負けたね、高島?」
「るっさいなぁ!」

 皆で懐かしい高校時代の話をして、食べたり飲んだりをして盛り上がる。

「なあ、大河原さん、司法書士ってことは書類作ったりするの?」

 高島君が私に話しかけてきた。

「おおっと、高島、さりげなく大河原さんに近づいている!」
「でも高島君じゃ、杏奈の彼氏には勝てそうにもありませんっ」

 京子と狭山君が面白がって実況をする。その様子を見て、私は高校時代を思い出した。
 私が付き合っていた日向先輩も目立つ人で、皆が憧れていた人。高島君だって見た目が悪いわけじゃないのに、いつも日向先輩と比べられていたんだ。

「うるさいぞ、お前ら」

 あの時は、からかわれて照れまくっていた高島君だったのに、今は笑って言い返すくらいの余裕がある。

「ところで大河原さん、俺らの会社で銀行からお金借りなきゃいけないんだけど、そういう金融関係の書類とかって、司法書士に頼むの?」
「うん、そうね。抵当権の設定は銀行と利用者の抵当権設定契約証書に基づいて、私達が手続きするわ」
「ていとうけん?」
「担保のことよ」

 専門用語が並んだせいか、高島君はきょとんとしていた。
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