マスカケ線に願いを

 だけど、ユズが気づかせてくれた。
 私も、人に甘えていいってことを。

 ユズがあの待合室で私を引き止めなかったら、私はコウや小夜さんとも友達になっていなかっただろうし、二人は付き合ってもいなかっただろう。
 そう思うと、なんだか不思議な気がした。


 そして、業務が終わって家に帰るときも、もちろんユズと一緒。

「さ、帰ろうか」
「うん」

 その甘い声が好き。
 その骨ばった手が好き。

 ユズは、私の大切なナイト様になった。


 大切なのは、考え方だ。
 ずっと、一人の足で立たなくちゃいけないと思っていた。
 だけど、そう思っていた私自身が一番「誰か」を望んでいたのかもしれない。

 私のことを甘やかしてくれる誰か。
 私のことを理解してくれる誰か。
 私の全てを受け入れてくれる誰かを。

 一人でいい、一人がいい、そう思っていた自分はあまりにも幼くて独りよがりだった。
 しっかりしてるだなんてとんでもない、私はただ周りを拒絶していただけだ。
 周りを拒絶して、一人でがむしゃらになっていただけだ。

 だから心が堕ちることがあった。
 だから無償に一人が寂しくなることがあった。

 きっとかつての男達が思っていたことは事実だ。
 私は彼らを必要ないって思っていたのかもしれない。

 だから、離れていった。

 大切なことに気づけた。
 ユズが気づかせてくれた。

 私の頑なな心を溶かしてくれた。
 私の大切な人。

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