マスカケ線に願いを

 今まで、私は男と一緒にいると、ほとんどといって良いほど身体を求められた。
 派手な見た目のせいで、軽い女と思われることも多かった。

「なんだ、人の顔じろじろ見て」
「いえ、シャワーを浴びたら獲って食われるのかな、って考えてたんです」

 ユズは鼻から笑いを漏らす。

「冗談言ってないでさっさとシャワー浴びて来い」

 私はユズの言葉に甘えることにした。



 私がシャワーから上がると、ハンガーを手渡された。

「そこが寝室だから。先に寝てれば良いぞ」

 そう言ったユズが、タオルを片手に浴室へと向かう。
 私は着ていた服をハンガーにかけて、寝室に足を踏み入れた。

 ほとんど初対面といってもいい男の寝室に、こうやって足を踏み入れてしまう私は、軽い女なのだろうか。
 でも、これがユズじゃなかったら、他の男だったら、決して信用していなかったと思う。

 ユズは不思議な人だ。
 人見知りが激しい私が、簡単に心を許してしまった。

 先に寝てても良いと言われたものの、部屋の主がいないのに先に眠るのは気が引けた。
 一人で寝るには大きすぎるベッドのシーツも、やっぱり黒だ。
 私はそのベッドの端に腰掛けてぼんやりしていた。
 ユズのスウェットは、やっぱり私には大きくて、ぶかぶかだった。
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