マスカケ線に願いを

「なんだ、まだ寝てないのか」

 頭をタオルで拭きながら、同じようにスウェットを着込んだユズが部屋に戻ってきた。
 私がユズを見上げると、ユズはにこりと笑った。

「ちょっと大きかったな」

 ユズも同じようにベッドに腰掛けた。

「なんでこんなにベッドが大きいんです?」
「寝相が悪いから」

 私が目を丸くさせると、ユズは続けた。

「冗談だ。寝るときくらいゆとりってもんがあってもいいだろ?」

 ユズの言い分がいちいち面白くて、私は笑った。

「さ、寝るぞ」

 ユズがベッドの端に横になる。私も反対側の端に横になった。
 二人が並んで寝ていても、身体が触れないくらい、このベッドは大きい。

 私はユズの方に身体を向けた。
 ユズは目を細めて、私を見る。

「でっかい猫を拾ったみたいなもんだ」

 そして猫扱いされた。

「ほら、もう怖くないぞ」

 ユズがゆっくりと私の頭をなでた。
 それ以上は触れてこない、それが心地よかった。

「見てくれは可愛い猫ちゃんだな」
「……みゃー」

 ためしに鳴き真似をしてみた。
 ユズはぶふっと笑いをこぼす。

「態度は一人前だ」
「……おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」

 頭をなでられる感触が心地よくて、私はそのまま意識を手放した。


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