別れ日
赤く滲む別れ日
「高野、おはよ」

「ああ、おはよう」

湿気くさい空気に包まれている教室で、ぼんやりしていた僕に声をかけてきたのは友人の矢野だ。

「朝から何かいいことでもあったのか」

こんなどんよりした天気の日でも矢野のテンションはいつもの通り、高い。

「聞けよ、俺、今日恋しちゃったよ」

何を朝からバカなことを言っているんだ?うんざりとした目を矢野に向ける。だけど当の矢野は話したくて仕方がなさそうだ。

「聞くよ。話せよ。こんな受験の真っ最中に恋に落ちたバカな男の話を」

もう受験なんてどうでもいい、そう前置きして矢野は話し始めた。
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