トーカタウンの子供たち
これは去年の話。

「絶対他の子には内緒だからね!」
ミサキが何度もしつこく言ってくる。
「リンさんとうちのお姉ちゃんが知り合いだってこと!」
僕もハジメっちもタロちゃんもうんうん頷くけど、ちゃんと聞いてはいない。
「ねぇ、聞いてる??もぅ~なんであんたたちにバレちゃったんだろ」

「あ、来たよっ」
サヤカちゃんが声を潜めて告げる。
「あんたたち、変なことしないでよね」

今僕らの目の前には第4回ラビィアスロンのチャンピオンたち、アーサー、ニコ、リン、ラルフがいる。四人は高校の同級生らしい。工業用ラビィを日常的に運転している会社員やラビィに乗りなれた元軍人など経験豊富な大人たちを抑えての高校生チャンピオンは異例だった。でもテレビでは顔を見たことがなかった。未成年だったりラビィが軍事的な一面があるなどの理由があるためらしい。だからみんなニックネームなんだって。もしかしたら学校の同級生も彼らがチャンピオンであることは知らないのかもしれない。

アーサーさんは赤毛だった。アーサーさんのラビィと同じ色だ。生まれつきらしい。ラルフさんはガシッとしていて、リンさんは長い黒髪がよく似合う。ニコさんは色白でハジメっちにどことなく似ていた。メガネのせいもあるかもしれない。制服を着ているとみんな普通の高校生に見える。

これがアーサーさんたちと僕らの初めての出会いだ。そしてなんとアーサーさんたちにラビィの運転を直接習うこともできたのだ。
「ラビィっていい感じだろ」
ラビィに触れているアーサーさんは心から楽しんでいるようだった。

この日から僕らは熱に浮かされたように過ごしてきた。ハジメっちはニコさんに憧れてラビィの勉強をしている。学校でもラビィの勉強はするが、ハジメっちのは全然わからない。
僕とタロちゃんはラビィのメーカーや馬力なんかのスペックや外見、乗り方にハマっていた。
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