下剋上はサブリミナルに【BL】
合皮だから大丈夫だよな。


明日の朝までには乾かないかもしれないけど。


そしたら運動靴で登校しよ。


校則破る事になるけど、不可抗力だもん、仕方ないよな。


学生用の靴って、結構高いんだから。

そんなに何足も買えやしない。


特にウチは、そんな贅沢できるような家庭じゃないんだからさ……。


今までそんな事を言い訳に使ったことなかったのに、ついそんな考えが浮かんでしまい、自分自身ショックを受ける。


ふいにザザ、という、タイヤが地面を擦る独特の音がして、ハッと顔を上げたら、いつの間にか校門前のロータリーまで来ていて、目の前にタクシーが停まっていた。


オレは自然の流れで後部座席に乗り込む。


「忍!」


その時、背後から、洸の声がした。


視線を向けると、昇降口の方から、一直線にこちらに駆けて来る、奴の姿が。


それを視界に納めた瞬間。



……言いようのない怒りが胸に込み上げて来た。


「行って下さい」


暗い、無機質な声で、オレは運転手にそう合図する。

ほんの数メートルの距離まで近付いて来ていた洸を拒絶するかのように、タクシーはタイヤを軋ませ、走り出した。
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