下剋上はサブリミナルに【BL】
その言葉に勢いを削がれたようで、山本は怒りの表情を標準モードに戻し、呟いた。


「まぁ、西島自身がそう言うなら、俺はこれ以上何も言えないけどさ……」


オレは内心胸を撫で下ろす。


こういうタイプは「誰にも言わないで」とお願いされたらそれを無下にはできないだろう。


オレの為に怒ってくれるのは有り難いけど、第三者が入ったりしたら余計ややこしい事になりそうだし。


「念のため聞くけど、その女子の中に斉藤っていた?」


答えは分かりきっていたけれど、オレは問い掛けた。


「うん。つーか、何だかそいつが中心になってやってたみたいだぞ」


やっぱりな……。



女って、こえ~……。


山本は「じゃ、俺部活行くから」と片手を上げて颯爽と歩き出した。


何か、ホントイイ奴。


オレはそのままノソノソと、校門前のロータリーまで歩を進めた。


そろそろタクシー来る頃だし。


ふと、左手でギュっと掴んだままだったローファーに目をやる。


こんな事されるほど、怨まれてたんだな。


さすがにちょっとヘコんだぞ。


特別汚されてはいないみたいだけど、気持ち悪いから念のために水洗いしよ。
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