下剋上はサブリミナルに【BL】
洸はまるで何度も練習してきたかのように、淀みなくスピーチを披露した。


「だからお前が罪悪感を感じる必要はない。どうしても気になるなら、社会人になってから親父に何かの形で返せば良いじゃないか」

「だから……」


オレは少々げんなりしながら返答した。


「オレはオレでちゃんと計画を立ててるんだから、お前にそんな余計な心配してもらう必要なんかなくて……」


あ、そうだ、と思いつき、オレは風呂場から脱衣所に上がり足をタオルで拭うと、自分の部屋に向かった。


「忍?」


洸が訝るような声をかけつつ後をついて来る。


オレはリュックに近づくと、昨日仕舞い込んだ通帳を取り出した。


「ほら。その為にオレ、ちゃんと貯金もしてるんだから」


通帳を開きつつ、洸に突き付ける。


「今んとこ20万以上貯まってんだ。もちろんそれだけじゃ心もとないけど、無いよりはあった方がいいだろ。それにこれからもバイトは続けるし、卒業する頃にはもーちょっと貯まってるだろうし」


どーだ。


おれの本気を見たか。


「じゃあ、俺と暮らせば、この貯金にはあまり手を着けずに済むな」


「……は?」

「大事に取っておけば良い」
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