アンダーサイカ


わけが分からず天井を眺め続ける私を置いて、ヨシヤは入り口の引き戸を全開にしたり、邪魔な段ボールを見えないところに隠したりする。


そのあと私の傍に寄って来て、


「さあ、お客様方が到着されました。豊花ちゃんの最初のお仕事ですよ。

僕を見る時のようなむくれた顔はダメ。ニッコリ笑顔でお願いします。」


通常の二倍くらいの増量スマイルを向けてきた。
当然私は更に眉間のシワを深くする。



でもこれも約束だ。約束だから守らなきゃ。我慢だ、私。


「うん、分かった。
やってみる。」


私のハッキリとした返事に気を良くしたらしい。ヨシヤの笑顔が更にとろけたものに変わった。


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