アンダーサイカ
また気分が沈み始めてきた頃だ。
「…?
何か聞こえた……?」
静かな部屋の中で耳をかすめた微かな音。
物音でも電子音でもない。
どこか聞き覚えのあるそれは、
【豊花ちゃん、お仕事ですよ。早く来てください。】
「!!」
―――ヨシヤだっ!
そう頭の中で叫んだ直後、またゴオッと強い風が吹きすさんだ。
室内で風が巻き起こるなんて普通ありえない。
風は家具や食器には目もくれず、バタバタと私の髪や服を踊らせている。
ギュッと目をつぶった私は頭の隅っこで、
―――なんでこんな時間に…!?
ヨシヤの理不尽な要請に、不満と不安を募らせた。