アンダーサイカ



また気分が沈み始めてきた頃だ。



「…?
何か聞こえた……?」


静かな部屋の中で耳をかすめた微かな音。

物音でも電子音でもない。
どこか聞き覚えのあるそれは、




【豊花ちゃん、お仕事ですよ。早く来てください。】




「!!」


―――ヨシヤだっ!


そう頭の中で叫んだ直後、またゴオッと強い風が吹きすさんだ。

室内で風が巻き起こるなんて普通ありえない。
風は家具や食器には目もくれず、バタバタと私の髪や服を踊らせている。


ギュッと目をつぶった私は頭の隅っこで、


―――なんでこんな時間に…!?



ヨシヤの理不尽な要請に、不満と不安を募らせた。



< 182 / 506 >

この作品をシェア

pagetop