ブスになりたい女 〜高飛車美少女 VS 秀才クール男子〜
 その男子は、中野君だった。中野君はスッと小山君に近付き、バケツに手を伸ばした。


 ああ、中野君は小山君からバケツを受け取るんだなと思って見てたら、中野君はバケツをグイッと傾けた。


 小山君が、「おい、かず……」と言った時には時既に遅く、バケツの水は恵美に向かって落ちて行った。


 バシャッと水が地面に落ちる音と、「ひゃっ」と叫んだ恵美の悲鳴は同時だった。


 予想外の展開に、みな無言で息を吞んだ。そして頭からずぶ濡れになった恵美に向かい、中野君の低い声が発せられた。


「水を被って目を覚ますのはあんたの方だ。あんたが修平に振られたのは誰のせいでもない。あんたの性格が、どうしようもなくブスだからだ」


 恵美はしばらく中野君を見上げた後、「うわーん」と泣き出してしまった。そして理香と加奈は、そんな恵美を支えるようにして、その場を去って行った。


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