あの頃、テレフォンボックスで
冬の夕暮れは早い。


芝生の上の親子の姿も、いつしかなくなった。
空気が冷たく感じられる。



「そろそろ帰りましょ?」


ケイタは
さっきから私の背後に座って
うしろから私を抱きしめるように
覆いかぶさっていたので、

私は振り向いて、
そう言った。



「トーコさん、こっち向かないで。


俺、もうどうしていいかわからないよ。


昔、なんで付き合う必要があるのかな
なんて思ってた自分がバカみたい。


付き合うとかそういうんじゃなくて、
もう、俺は

トーコさんと離れたくないよ。」



私の肩にまわした
ケイタの腕をそっと掴んだ。


離れたくない、離したくない。
それを、
好きだとか、愛してるとか、


そんな簡単なことばで
言うことはできない。


さっきちらっと見たとき


ケイタの目は確かに赤かった。
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