あの頃、テレフォンボックスで
帰りの電車に
私たちは無言のままで乗っていた。


ことばは交わさなかったけれど、
二人して
同じ想いにかられながら。


他愛のない秘密。


「ただ、海をみてきただけ」



それだけのことなのに

私を取り巻く空気の層が

ざわめいて、めまいがする。




海は・・・
絶望を映し出したような深緑だった。

本当に、
あの海は澄んだ・・・・
青くて、透明な海に

続いているというのだろうか?





駅の改札を出て
コーヒーショップの前で


ケイタくんと別れた。

定期代を弁償するという私の申し出を
かたくなに断って、


彼は弁償の代わりに、と

私の携帯のアドレスと番号を
自分の携帯に登録した。






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