あの頃、テレフォンボックスで
そう、
正直いって、あのときは
志穂が妊娠を理由に
仕事を辞めるなんてこと
ありえない、と思った。

けれども、
なにごとにも全力投球しなければ
気がすまない彼女が
仕事と育児
両方を取ろうとしなかったことも
やはり、うなずける。



「やっぱ、30才すぎての結婚は
どうかって話よ~~。

瞳子は昔から
結婚して大きな家に住んで
ダンナさんのために
いつもキレイにしてたい、

なんて言ってたよね。

思い通りになったんじゃないの?」




・・・・・私、そんなこと言ってた?

思い通りになんて
なってない。

だいたい、

自分が

昔、思い描いていた将来なんて


そんなもの、
あったのかどうかも
思い出せない。




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