雪が降る町~追憶のletter~


「じゃあな」


それからすぐにバスに乗り、今はもう自宅前。
その間快斗はずっとだんまりだった。
晶も同様で、何も話せずにここまで歩いてきた。

晶の中で引っかかってることと言えば、自分が真田といたことに関して快斗が今回全くなにも言わないこと。

そして、タクシーに乗り込む直前にあの佐野という女性が快斗に何かを言い掛けていた場面―――。


「あ、うん」


それでもやっぱり何も言えない自分はいつまでも変わらない。

ずっとずっと溜めている言葉と想いは、春になったら雪解けと共に姿を見せるのかと思うけれど、次から次へしんしんと降り積もる雪に埋もれて根雪になりそうだ。

あの日の人には会えなかったから――

でも、今声を掛けたい、伝えたい人は目の前にいる筈なのに。

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