雪が降る町~追憶のletter~
「あ···」
「じゃあ、聞かせて貰おうかな」


カチャンとカップをソーサーに戻して、穏やかな口調で晶に言うと、晶はしばらく固まったように両手を足に置いたままカップを見つめていた。


「あの、私··ずっと気になっている人がいて。」
「うん。あの手紙のことかい?」
「はい。それで、最近その差出人がわかって···」
「え?そうなの?」


晶の話にさすがの真田も驚いたように目を丸くして聞き返した。


「あ!いえ。まだ、可能性が高いって位で、確認してなくて」
「そう、か…。でもその人が仮にそうだったとしても、10年前なわけだし、その後からでも考えは変わったりしない?」


真田は責めることも呆れることもなく、真摯に晶の話を受け止めて言った。

その手紙の主を断定した後からでも自分とのことをもう一度あらためて考えてみてはくれないか―――と。


「―――ごめんなさい」
「···そこまで··?」


しかし、晶はそれを聞いても少しも考えないで、顔を上げて一言一言を自分自身確認するように真田に伝えた。
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