雪が降る町~追憶のletter~
「違うんです。この手紙の人が、思い当たる人であってもそうでなくても。他の人の存在に―――気が付いたから」


晶は白い封筒を右手でそっと撫ぜるようにしながらゆっくりと続けた。


「この手紙をくれた人とも、真田さんとも、10年越しの“再会”にドキドキしなかったかといえば嘘にはなりますが···だけど、そんな“運命”みたいなことに捕われなくてもいいのかなって」


真田の視線は晶にずっとある。
真田は呼吸をするのを忘れていたかのように、晶の言葉が途切れてからゆっくりと息を吐いた。


「―――それは、やっぱり“彼”だね?」
「···向こうはただの幼馴染だと思ってるだけかもしれませんけど」


少し不貞腐れたように晶が答えると真田は眉を下げて小さく笑った。


「やっぱり、もう少し早くに結城さんを捕まえとけばよかったかな」
「え?」
「ああ、でも結局は“こう”なってたのかな」


最後まで紳士的な真田に晶は心の傷を最小限にしてもらえて、心から尊敬と感謝をするのだった。



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