雪が降る町~追憶のletter~
「な、に…それは、10年前の差出人に――?」

「···25歳の、桜井快斗に」

「···マジ?」

「ああ、でも。名前も書かない、名乗り出られないような人に、返事なんかも出来ないか」


晶がふいっと横を向いて、つんとした言い方を敢えてする。
少し上向きにした顔にひんやりとした雪が溶けていく。


「―――俺はもう逃げない為にここに来たんだ」


そういって晶の体を引き寄せるとすっぽりと自分の胸に晶を抱きしめた。


「散々逃げ回ってたくせに」
「俺だって、怖かったんだよ」
「何が」
「幼馴染の晶までも失いそうで―――」


ぎゅうっと力を込めて抱きしめられる、快斗の腕からは、本当の言葉だとわかった。


「だけど、やっぱり、俺がこの手を取りたくて――他の誰かじゃなくて、俺が」



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