雪が降る町~追憶のletter~

「···なんだよ」

快斗がそんな晶の反応に突っ込むと、晶は素直に心の内を口にした。

「すごいねぇ。快斗がこんな大人になるなんて思いもしなかった。なんか、そういう世界正直わからないけどかっこいいね!」

晶の仕事は事務。
そういう至って普通の会社だと、周りの男も至って普通のサラリーマンで。
だから晶にとって快斗の姿は新鮮で魅力的に映ったのだ。


「…俺だって普通の雇われサラリーマンだそ」
「そうなの?それでもやっぱりうちの人たちとは違って思えるけど」
「まあ晶は大人しく事務って、しっくりくるな」
「どうせ取り柄も何もないですよー!」


さっきは急に警戒したような顔をして、今はまた昔のように無邪気に笑う。
そんな晶を快斗は優しく見つめるだけ。

その視線に気付くこともなく晶は10年前にタイムスリップしたように懐かしい笑顔を快斗に向けるのだった。



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