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「お兄ちゃんも、気をつ……」
「陣!」

 気づいたら、陣は健也を思い切り殴っていた。

「きゃっ」

 店にいた客が慌てて騒ぎから逃げようとする。

「ってぇな!あにすんだよ!」
「お前に、みあの何がわかんだよっ!」

 陣が、怒っているところを初めて見た。

「ふざけんなっ」
「やめて!お願い!」
「何してんだ、橘!」

 取っ組み合いになるところを、他の男性店員が健也を、私が陣を必死に止める。

「お願い、やめて、陣……」
「けど、あいつ、みあに……!」

 ありがとう、陣。

「あんな男、殴る価値もないから……。行こう」
「みあ……」

 私は他の店員さんに頭を下げて、そそくさと店を去った。


「あいつ、誰?」

 しばらく歩いたとき、ぶすっと陣が聞いた。

「……私の、元友達」

 言葉は間違ってない。

「……あいつと、なんかあったの?」
「私は、好きだったよ」
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