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 歩きながら、自嘲気味に言う。陣の顔をまともには見れなかった。
 ぐるぐると感情が絡まりあって、頭がおかしくなりそうになる。
 何もかもを忘れて歩いていけたら、どれだけ幸せなのだろう。
 健也のことも、陣のことだって忘れて――、一人で生きていけたら幸せなのに。
 私にはそんな勇気がない。
 陣がいない未来なんて、恐いのに、現実は陣とはいつまでも一緒にいることができないんだ。

「みあ、送るよ」
「うん……」

 私は不器用なのか、弱いのか、自分ではそういうふうに思ったことはないのに。
 私は強く生きてきたはずなのに、どうして今さらこんな想いをしているんだろう。
 ――もう後戻りはできないのだろうか。

 のんびり歩いて、いつの間にか私のアパートについていた。その頃には辺りはもう、暗くなっていた。
 入り口まで陣が送ってくれる。

「んじゃあ……また明日」

 陣が帰ろうとするのを、だけど私は引き止めてしまった。

「みあ……」

 泣いてはいない。
 だけど、一人でいると泣いてしまいそうで嫌だった。

「一緒に、いて……」

 言っちゃいけない言葉だった。

「……ん、わかった」

 陣は、そっと私の頭を撫でて、部屋に入った。

「なんか、食べる?」

 私は冷蔵庫から食材を選ぶ。

「大したものはできないけど」
「うん」

 私が簡単なオムライスを作っている間、陣は笑顔で待ってくれた。
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