急性大好き症候群
「唯織、もったいないよ。頭いいんだから、大学受ければいいのに」


受験勉強から解放されたあたしを恨めしそうに睨みつけながら生物の参考書と向き合っている美紗がぼやいた。


あたしは肩を竦めてみせた。


あたしが専門学校に行くと言った時、周りのみんながみんな大学行きを勧めてきた。


唯織の成績なら国立大学でも十分狙える。何も誰でも入れる専門学校に行って今から将来を決めなくてもいいじゃないか。大学ならいろんな人との出会いがあって、それからじっくり将来のことを考えてもいいじゃない。


そんな言葉があっても、あたしは頑として専門学校への道を譲らなかった。


あたしの夢は保育士だ。


大学に行ってそれ以外の何かを学ぶのはあたしは嫌だった。


小さい頃から持ち続けているこの夢を一刻も早く実現させたかった。


別に焦っているつもりではないし、そんなになりたいと思うような大きい出来事が今までの人生で何かあったわけでもないけど、今のあたしに寄り道をしようなどという考えは邪魔以外の何者でもなかった。


保育士になりたい。その夢を叶えるだけならば専門学校で十分で、大学に行く必要などない。


めんどくさいことは嫌いだ。さっさと終わらせたい。


みんなが大学を目指しているからって自分も目指すことなど、周りに合わせているだけだ。


あたしはそうはなりたくない。


学歴社会とは言うけど、保育士ならば学歴はあまり関係ない。


そんな考えなど甘いのだと、周りの人には言われたけど。


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