急性大好き症候群
「美紗は裕也と同じとこ受けるんでしょ?」


まあ、自分が専門学校に行くからって、何となくという理由で大学進学を目指す人を非難するわけではない。


美紗もそんな一人だ。


「まあね。お互いまだボーダーラインより下だから、頑張らないと」


日頃の受験勉強で疲れているけど何だか幸せそうな美紗が少しだけ羨ましい。


好きな人も一緒だったら頑張ろうって思えることが。


もし裕也と別れたらどうするつもりなんだろうと思うあたしは嫌な女だろうか。現実的だと呆れられるだろうか。


「まあ、わかんないことがあったらいつでも聞いてよ。あたし、これでも美紗より頭いいから」

「うわっ、事実だけにムカつくんだけど。唯織、暇?」

「まあ、この時期、周りはみんな受験勉強だからね。あたしくらいじゃない、受験から解放されたの」


周りがピリピリしてるから、遊びに行こうとも思わない。


今は模試が毎週のようにあって、受験生はその結果に毎週一喜一憂しながら机にかじりつく。


「唯織、生物得意だっけ?」

「数学の次にね」

「全く、バリバリの理系人間がなんで文系クラスにいるんだか」

「あたし、国語と政治経済も得意だもん。苦手なのは日本史だけ」

「はいはい、もういいや。これからなんでも唯織に聞く」

「どうぞ」


傍から見ればムカつくほど余裕ぶっている奴の会話だけど、そんな会話が成り立つのもあたし達が気心知れた仲だからだ。


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