こいつなぎ
 ゆっくりと。
 そうだ、スローモーションっていうやつだ。
 勢いだけで彼は、彼女に押し倒されてしまった。


「……」
「……」


 暫しの沈黙の後、先に声を出したのは下にいた彼だった。


「……わーぉ。“しおり”チャンってば。珍しく積極的じゃないですか」


 彼は彼女をからかうつもりで、悪戯っぽく向かい合っている彼女にいった。

 眼は、離さない。

 じっと、彼女の瞳を捕らえたまま。
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