絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
言い出せばきりがない。ただ少し、手をつないでそこにいたいだけなのに、いつも巽は快楽を求め、それに反応しないと許さないとばかりに執拗に追い回す。
「……週一回でも、会えるのが楽しみで……そのために、残りの6日があって……」
 残りの6日、せめて、一日でも電話ができればいいのに。
「俺なりに都合をつけてるつもりだ」
 だよね。そうなんだよね。だから、今更何言っても、どうも変わらないんだよね。
 突然、伸びてきた指が顔に触れる。
「……今日はもう寝るか?」
 全てが思い通りにいきかけるようなその一言だったのに、何もかも信じられなくなっていた香月は、それさえもはねのけてしまう。
「帰る」
 意を決すると、ソファの上で体を起こした。
「好きで……、好きなんだけど」
 声は震えたままだった。
「私の好きと、あなたの想いは全然違う。それでもいいけど、それでもいいと思うから今もいるんだけど!」
「ならいいだろう?」
 再びソファに力づくで押さえつけられる。
「俺のことが好きだから、俺の言うことなら、なんでも聞くんだろう?」
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