絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅲ
 彼女がもし彼氏いない歴ウン年という大物だといけないので、返事だけに留める。
「……どんな人??」
 携帯をテーブルの隅に置いた今井は、しかし自分のことよりも、ただ控えめに興味を持っているという風だったので、正直に話すことにした。
「どんな人……、兄のちょっとした知り合いで……」
「じゃあお兄さんの紹介か何か?」
「うんまあ、紹介とまではいかないんですけど、そんな感じです」
 特に不自然な点はない。
「お兄さんの仕事を手伝ってるとかそういう感じですか?」
 意外にも紺野が口を開いた。
「いえ、そうではないです。兄と彼は顔見知り程度で……」
「お兄さんって何してる人?」
 今井はこちらをじっと見た。
「一応経営者です」
「経営って何を経営してるの?」
「……駅前のショッピングモールです」
「え!! あんな大きいとこ!?」
 今井は突然テンションを上げたが、このセリフが引き金になって目の輝きが変わる女性はもう見慣れていた。
 返す言葉に困ったが、丁度追加の飲み物が運ばれてきたので、助かる。
 だが今井は店員が外へ出るとすぐに話を再開させた。
「すごいー!! ね、年いくつ? 香月さんのお兄さんってことはまだ若いの?」
「私より、10上です」
「ってことは、私より上!?」
「えーと、そうですかね、37です」
 今井の年齢を知らないことにしておかなければいけないと咄嗟に思ったので、返事は曖昧にした。
「当然結婚してるわよね……」
 箸を置き、じっと見つめられたが、私にできることは何もありませんから!と心で叫ぶ。 
「いえあの、独身主義らしいです」
「独身主義って、独身主義ってどういうこと??」
「何で2回聞くんだよ……」
 紺野はしかめっ面で、ハイテンションになった今井ではなく、箸先の鍋を睨んだ。
「さあ……、兄の女性関係とかは全く知りませんけど、気難しい人だから多分、結婚が向いてないって気づいたんじゃないですかね……」
 兄は気難しいのだろうか??
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