境界線
帰り際に男は高橋にもう一度罵声を浴びせた。男の姿はすぐに見えなくなったが、私はまだ恐怖で硬直したままだった。
そんな私をリョウスケが後ろから抱きしめる。高い身長の彼は私の顔を上から覗き込んだ。
「大丈夫か、ユリコ」
「警察は嘘?」
「当たり前だろ」
リョウスケの体温に少し緊張が解けた。でも彼の体からはやはり女性ものの香水の香がぷんぷんする。
何となく苛々して、リョウスケの腕を解き、高橋に駆け寄った。