境界線
私は飲み終えた紅茶のカップを机に置き、パソコンの画面を覗いた。
用紙サイズ設定と書かれた項目をクリックするとB4と表示されている。コピー機の中の用紙はB5である。
「高橋。サイズ間違えてる」
「え!あ!ごめんなさい!」
「もういいや。私やる」
その方が早かったわ、と呟きながら設定を切替え、印刷ボタンをクリックした。申し訳なさそうにコピー機の前に立つ高橋を椅子に座るよう促した。
「部長。コーヒーいかがですか」
「うん。二つちょうだい」
「はい。わかりました」
たまたま現れたマキは高橋の姿を見てくすりと笑い、給湯室へ向かっていった。
高橋は再度謝りながら私の横に座る。
「気にしないで、と言いたいとこなんだけど。ちょっと気にした方がいいかも」
コピー機から出た資料をまとめながら私は高橋に忠告した。高橋は背後にいるはずなのに、声色からも反省しているのが伝わってくる。
「でも気にはしてるか。さすがに」
「はい。気にはしてるんです、すごく」