あの夏の君へ





コソコソとすれ違う人の声が聞こえる中で、新井田の真っ直ぐな声が聞こえた。




「俺、学校辞めて働こう思う」




その言葉が私の心臓をえぐるように突き刺した。

「うん」

「あいつは休学して出産に専念して、俺は自主退学して働く。あいつん家と話してな、きっちり金払ったら俺はもう関わらんことになった。今日それ言いに学校来てん」

「そうなんや」

「亜樹ちゃん…本間にありがとう」

彼の眉が下がってる。

やばい、泣く……。



「亜樹ちゃん……本間に好きやってんで…」

言葉で涙が溢れ出た。

少なくとも彼に心が揺らいだことは確かだった。

荻に対する罪悪感と新井田とはこれで終わりなんやってことの寂しさが私の涙腺を緩めた。





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