あの夏の君へ





荻の苦笑いは見るに苦しい。


それほど、出たかったん?


この頃の私はチームプレーでするスポーツの裏側を分かっていなかった。

チームで協力し合って勝ち取る一点でもある。

だけどチームプレーの裏側は皆がライバルだということ。

必ずしも全員が試合に出れるわけじゃない。

先発だった人が下ろされることもあれば、キャプテンでも試合に出れない人もいる。

ましてやこの強豪校…。

一生応援だけの三年間を送る人もいる。

それでも選ばれるように、一日でも早く上手くなって強さを認められるように、誰もが頑張ってる。

手を抜かず、ボールを追いかけるその一人が荻だった。

ライバルから見れば、ラッキーだと思うかもしれない。

怪我をしたのが荻だった。


ただそれだけなのかもしれない。





< 79 / 278 >

この作品をシェア

pagetop